院長コラム

膝前十字靭帯損傷の症状

急な外力による転倒、ジャンプから着地の動作、バスケットボールなどの競技中の切り返し動作などで膝関節に大きな負担がかかり、内部にある前十字靭帯に急激に捻りの外力がかかることにより、靭帯の部分断裂や完全断裂が起こること。

26歳を平均に比較的若い人に起こりやすく、70%がスポーツによるもので、特に女子に多く見られます。

部分断裂は経過を見ながら保存療法で済むこともありますが、完全断裂は手術適用となります。

完全断裂になるほどでは前十字靭帯以外に、膝の動きを支えている内側半月板や内側側副靭帯の損傷または断裂も併発します。半月板は縫い合わせる縫合手術となることが多く、内側側副靭帯は保存療法で修復が見込めます。

痛めた直後は疼痛・関節血腫(痛めた靭帯から出血します)・関節周囲から太ももふくらはぎの腫れ・運動制限(膝が曲がらない)といった症状が現れます。

ジャンプからの着地の動作などで「この時に痛めた」という心当たりがあるはずで、急な外力によるとはこのことです。
しかし最近の研究では毎日の練習により積み重なった負荷により少しずつ前兆がある中で、試合中の不自然な動きや接触動作により靭帯損傷につながるという意見もあります。
痛めた後も少しは運動を続けられることもありますが、早急にアイシングで患部を冷やし痛めた靭帯や関節からの出血や炎症をおさえ、MRI検査を受けることが必要です。

痛みについては靭帯損傷の程度にもよりますが、靭帯そのものの痛みの他、部分的に引き伸ばされた関節や内側側副靭帯の痛みの方が強いこともあります。

 

前十字靭帯とは

膝関節を構成する大腿骨と脛骨を関節内部で支える強靭な靭帯で、麺類のきしめんが細くなって巻きついたような形状をしています。

約2000Nを超える力に耐えられます。
脛骨の内側果結節から後上外側へ大腿骨顆間窩外側に付着し、脛骨の前方移動の抑制力の80%を担います。靭帯の長さは平均3.8センチメートル、中央部では幅1.1センチメートルあります。
後十字靭帯に対して強度は2倍あり、長さは5:3と長くなっています
前十字靭帯を断裂すると脛骨の前方移動が10ミリメートルを超えます。
前十字靭帯は膝の伸展時緊張し、後十字靭帯は屈曲時緊張します。

前十字靭帯は走行中、下腿(脛骨)が内旋(膝が内側に折れる向き)により緊張し伸ばされ、逆に後十字靭帯は緩みます。
前十字靭帯は下腿を外旋方向(親指が外方向)へ誘導する機能があります。
膝関節の外反(膝が内に入り足首が外に向く)や過伸展(膝が伸びてしまう)といった動きを制限します。

こういった機能上の動きがスポーツ動作中に乱れたりすることで、靭帯が引き伸ばされ障害が起こり、ひどい場合は断裂につながります。
膝関節は屈曲や伸展の角度変化の中で関節の運動中心が変化し、一定の運動軸では規定されていません。
膝にサポーターをはめてもずれ落ちてくるのはこのためです。
また最近の研究では膝関節外反位で脛骨回旋時に、関節面の大腿骨外側果と靭帯が接触し損傷することも挙げられています。

 

膝前十字靭帯損傷の原因

スポーツ動作中の発生原因として、アライメント(関節・骨の位置)の乱れや神経筋コントロール機能の不全があげられます。

神経筋コントロール機能とは固有受容感覚ともいわれ、関節内の靭帯や半月板または関節包とそれらに動力を与え運動に導く機能です。

例えば膝を90度に曲げる動作では膝関節の位置や足首・足底の位置が乱れることなく一回、二回とでできる人もいれば、同じように曲がっていても、体がぶれたり股関節・足関節の角度が乱れて膝関節内にねじれの力がかかる人もいます。

また股関節の屈曲角度を上げたり足関節の屈曲速度を上げることで、股関節の屈曲角度の代償にしたりします。
このような自分の関節の位置のズレが運動中も生じることで筋肉の疲労がより大きくなり、靭帯損傷につながります。

筋力の弱さや他の筋肉とのバランスの問題、体の位置(関節の位置)を乱さないことが必要です。
アライメントの乱れとは体の位置の問題です。

例えばバスケットのストップ動作では膝屈曲角度が浅い人もいれば深い人もいます。
また膝が内側に入り「knee-in to out」の状態になる人もいます。

特に女性では体重あたりの筋量が少ないこと、膝関節の回旋量が大きいこと、膝関節が過伸展・外反すること、骨盤が広いことなどが原因としてあげられます。
筋力強化の他に、正常な筋出力ができ乱れた運動同作の改善が求められます。