痛みについて

痛みのメカニズム

痛みとは組織損傷を伴うもの、または伴っている可能性のあるもの。実際の組織損傷がなくてもその可能性が近い、将来起こりうるなど、潜在的にある状況下の元、不快な感覚的入力・情動的記憶体験による私たち人体への危険信号です。
組織の障害と感情により身体の中で起こっている筋肉や関節などの障害を、今までの体験からここの具合が悪いと脳中枢が認知して私たちは自覚します。組織損傷無しでも損傷があるかのように感じることもあり、離れたところや体の奥から鈍痛と感じ、患者様はここがこうですとはっきりわからないこともあると思われます。本来人の体はこの様にできているのかも知れません。

人は自分の身体の痛みのある部位を正確に認識できないことがあるのではないか。個人差もあり、感覚神経・運動神経・位置覚情報や関節受容器の感覚がすぐれている人もいます。
反対に繰り返し怪我など故障を繰り返す、痛みがかなり進行してから気付く人などもいます。
常に私たちの身体の中では、これまでに経験した痛みと今回の痛みを比べ対応します。
肉離れや捻挫のようにはっきり分かるものもあります。今まで経験したことがないものなら判断がつきにくいため、本人は気付かず分からないままのこともあるでしょう。

それに感情も加わり、数値化した判断が難しいものです。組織を傷つけるようなことをすると、組織の中や人体に一定のサインがでます。腫れる、熱っぽいなど炎症を伴うこともあり、これが痛みの元となります。
組織損傷とは肉離れや靭帯などの部分断裂、これらの程度が軽いものなど実質の損傷が疑われるものから、軟部組織といわれる筋肉・筋膜・腱・腱付着部・筋腱移行部・骨膜・関節・滑膜・靭帯・神経などから起こります。
これらから炎症・癒着・関節の歪み・トリガーポイントが起こることで、組織から痛み物質が広がり感覚神経を主として末梢神経・中枢神経・脊髄・脳中枢へ伝わり判断して感じ取ります。

分類すると・・・

侵害受容性疼痛

これは切り傷・火傷・肉離・軟部組織からくる痛みなど「痛い」と分かる、どこかに害が加わったと分かるものです(一次痛)。組織には何らかの反応があり、疼痛による筋腱の反射性収縮短縮・索状硬結・関節の腫れ・滑膜炎などが起こります。

血管からくる拍動性疼痛

これは内臓からくるものが多く、背中から肩甲骨上部の放散する胃の痛みや頭頚部の筋肉血管が緊張したりして起こる頭痛などです。末梢性の問題より、自律神経系によるものです。脂汗が出る、手足が冷える、鳥肌など立毛現象などが起こります。

神経因性疼痛

神経に傷がついたりして痛むものです。怪我などで組織が修復していく中、神経の傷が中々治らず痛みます。

これらが末梢性の痛みですが心からくる心因性疼痛もあり、情動記憶が関係し大脳辺縁形が認知判断します。疼痛による不快な情動感覚は、大脳辺縁系が関係します。
スポーツなどで怪我をすると競技復帰するのに躊躇したり怖がったりするのも、体性組織だけの反応ではなく心理面も影響しています。傷みは本人の感覚でしか分かりにくいものですが、それを少しでも周りがそれぞれの立場から理解していかなければなりません。

身体を使いすぎ怪我をすると、炎症が起こります。炎症の五大兆候といわれる疼痛・発赤・発熱・腫脹・機能障害を引き起こします。関節・靭帯・腱鞘・滑膜・筋・筋膜などにスポーツの競技特性や日常生活での無理な動き、間違った動かし方などにより起こります。

炎症の発生機序として組織細胞が壊れることで、痛みの原因となる発痛物質が放出されます。
これを内因性発痛物質といいヒスタミン・セロトニン・ブラジギニン・ロイトコリエン・カリウムイオン・水素イオンなどです。こういう物質が細胞外組織に拡がり、細胞膜からプロスタグランジンという物質が作られ、これらの発痛物質に働きかけ活動させ痛みを発し血管を拡張させ血管の透過性を亢進させて血液が血管外へ漏れ出し発赤腫脹を起こします。
また組織修復の過程でマクロファージなど白血球が働くことで、発熱の作用が出ます。炎症止めの薬や注射で早いうちに治まれば筋肉や靭帯へのダメージが少ないのですが、そのまま無理な運動や動きをしていると容態は更に悪くなります。間違った動かし方や痛みによって短縮した筋肉は、放っておくと正常には戻らず悪いところを抱えたまま競技運動や日常動作・仕事での無理な動きになります。

痛みは虚血によっても起こります。筋肉中の血行が悪くなり筋肉内の血液が少なくなったり血管が収縮したりすると、組織が圧迫されリンパ液静脈の流れも悪くなり活性酸素が多くなり組織にむくみなど疲労物質が溜まり筋肉が硬くなったりします。
それが痛みとなり、人体は認識し交感神経優位状態となります。

よい状態の筋肉

筋肉痛・痛みは交感神経の緊張をもたらします。血管収縮による緊張状態と重なり、痛みの悪循環と繋がります。
暖めて血管を広げて、老廃物をすばやく排除するコンディション作りが必要です。内蔵に痛みがあると、体の表面に痛みがくることがあります。内蔵の傷みを感じ取る感覚神経と皮膚表面の感覚を司る神経が脊髄中枢で繋がり、同じ経路を通るからです。胃の調子が悪いと背中から肩甲骨辺あたりが痛いなどです。
背中が痛いといってむやみにマッサージしていると、このような内蔵からくる不調のサインを見逃してしまうことになりかねません。

筋肉などからくる運動器系からの痛みは動かしたりすれば痛みが出ることが多いですが、内臓からくる放散通はじっとしていても脂汗が出るなどします。疲れた内臓や自律神経機能を回復させるマニュピュレーションが必要です。

痛みは虚血によっても起こります。筋肉中の血行が悪くなり筋肉内の血液が少なくなったり血管が収縮したりすると、組織が圧迫されリンパ液静脈の流れも悪くなり活性酸素が多くなり組織にむくみなど疲労物質が溜まり筋肉が硬くなったりします。 それが痛みとなり、人体は認識し交感神経優位状態となります。筋肉痛・痛みは交感神経の緊張をもたらします。
血管収縮による緊張状態と重なり、痛みの悪循環と繋がります。暖めて血管を広げて、老廃物をすばやく排除するコンディション作りが必要です。

痛みとは体にとって非常に大事な機能であり、人間の体から自然に発せられる重要なサインなのです。もし痛みを感じなければ、人体からの警告信号を見逃すことになります。
本当はどこか(筋腱付着部など)痛めている、もしくは傷めかけていることを見逃してしまい、そのままスポーツ競技や無理な労働を続けることになります。

人によって感じ方がすぐ分かる人もいれば、鈍い人もいます。
われわれ施術する人間として、そのあたりの個人差があるものを問診や細かな動きの癖・整形テストなどを行うことで、見逃さないように勤めていかなくてはと感じます。
うまく自分の様態を説明できる人もいれば、できない人、こちらの説明を理解できない人などがいます。痛みがあるということは、無理をせず休みなさいというサインです。
我慢して無理をしている間に、痛みを感じる神経中枢や脳幹が痛みに慣れてきて、麻痺しだします(痛みへの閾値が上がる、閾値とは境界・限界点をさす)。痛みを我慢していると人体はその痛みに慣れてきてしまい、疼痛を抑制してしまいます。
体に異状があるのに脳中枢は修復作用を出さず、このままでよいと判断してしまいます。

おかしいと思った初期の段階で施術するのが大事で、そうすれば早く症状も良くなります。
痛みを我慢していては、パフォーマンス自体の向上も望めないでしょう。しかしアスリートや日々仕事に追われている人には、休みたくても休めない状況の方もいるでしょう。
痛みを抱えながら「なんとなくこのあたりが痛い」、「日によって動作によって違和感を感じる」など、不安を抱えているものです。どこか原因があるから痛く、まだ軽いうちに治れば良いのですが、そのまま競技や仕事を無理に続けていると、気付いた時には悪化していることもあります。
肩関節付近や重度の腱の痛みなど、そのまま使い続けることで腱の損傷や変性、更により深部の靭帯損傷に繋がります。

また腰が痛いといっても背部の筋肉なのか、筋膜か体幹から背部へくるもの、殿筋からのものなど、また椎間板・椎間関節・靭帯からのものなどあり、急性期や慢性痛では症状も違い、痛がり具合も個人差があり心理面も影響します。
大きな損傷や手術後の組織修復に関わる結合組織も痛みの原因となり、機能障害を引き起こします。
傷ついた組織を修復する組織は線維性で、この線維組織が弾性組織と入れ替わることにより、関節の可動性が著しく制限されることがあります。
結合組織の成分は、関連のある関節が不動化すると伸張性を失います。

関節の不動化によってプロテオグリカン分子から水分が抜けてゆくため、結合組織の線維が互いに接触し異常な架橋を作ることで伸張性が失われる。長引く怪我により正常な動きができないことが続くことで、関節液の流れ・潤滑機能が失われ動きの悪くなった関節、それを取り巻く骨・筋肉の動きも悪くなり、正常な運動機能は回復しないでしょう。
病的な結合組織の代表として、瘢痕組織、癒着、線維性拘縮があり、これらは手技療法で改善が見込めます。関節潤滑機能を利用した手技が必要です。また神経伝達物質の広がり具合や感覚神経の過敏性が影響することで、どこの痛みとは分かりにくくなります。

脳中枢がはっきりと認識できないのです。腰が痛いので周りの筋肉をマッサージして矯正して終わり、というものではないと思います。
同じように肩関節についても肩の前方に痛みがある場合、関節から放散するもの、棘上筋腱炎や肩後部の棘下筋大円筋などから放散するものもあり、実際問診テストの段階で原因をよく聞きストレスをかけると「ここです、この痛みです」と本人に理解してもらうのが良い方法ですが、肩関節の場合各筋肉が複雑に動きの局面によって協力したり反対に拮抗したりするため、分かりにくいものです。
肩板損傷など、無理して使い続けると手術適用になることもあります。

体の部位や競技特性により痛むところや特徴もあり過去に経験していればこれだと分かることもありますが、漠然と大体このあたりの痛みということが多く、それをできるだけ特定して「おそらくココが原因です」としてあげることで、施術だけでなくパフォーマンス向上も兼ねた予防策、トレーニング策案へとつながると思います。
投球フォームが悪くてどこかに無理な負担がかかり、結果として関節・靭帯・腱などに痛みとしてそのサインが出ているのですから、消炎鎮痛剤でその時は治ったとしても無理な動きがかさなり耐え切れなくなると悲鳴として痛みが再発するでしょう。
痛みに耐性があることは競技や仕事を続ける上では大切ですが、本人の体は確実に悲鳴を上げています。
組織損傷が出ないうちに施術することが必要になります。
どこかに痛みがあるから耐え切れずに病院に行く、逆に大人になって少しぐらい変形していても痛みもなく日常生活に支障がなければ行かないということです。

痛みを伝える感覚神経は非常に細いのに対し、筋肉に運動指令を出す運動神経は太く脊髄から出てどの筋肉へ作用するのは分かり易いのですが、感覚神経は非常に細い上に脊髄中枢へと伝わる過程で複雑に作用し、また抹消組織でも炎症性痛み物質により中枢へと伝達し感作現象を起こすこともあります。画像診断レントゲンMRIで異常が見つかれば、直ちにそれが直接の原因という訳ではありません。
腰のヘルニアでもヘルニア根が出ているが日常に支障ない人もいます。痛みの原因は他にあるのです。

変形性膝関節症O脚で画像診断であれば軟骨が減っています。列隙も減り、水がたまっています。半月板も変形してきていますということになり、痛み止めや水を抜くなどの処置になるでしょう。
しかし痛みの原因は他にもあり、軟骨には痛みを感じる受容器がなく周りの滑膜の炎症や関節包に伸びる神経終末を痛み物質が刺激します。それを痛みと感じ取ります。更にそれによる疼痛性関節反射による筋肉・腱の短縮が生じます。
膝関節や膝蓋骨を支えている靭帯や、より深層にある線維束への無理な負担による炎症や癒着も考えられます。半月板も変形によりすぐ手術という訳ではなく、変性の中で足底板作成インソールにより様子を見て、それでもだめなら手術を考えるのが得策と思われます。

関節が痛い時、関節痛となりますが、関節内には痛みを伝える神経線維はほとんどなく、関節周囲から痛みが出ている場合があります。関節を取り囲む膜や靭帯・筋肉・筋膜などには痛みインパルスを伝える神経線維が多く分布しているからです。
膝に水が溜まると痛みを誘発する伝達物質の濃度が増し、それにより関節包・滑膜に分布する神経線維を刺激し、脊髄中枢・脳中枢が認知する、そして水を抜くと濃くなった関節が少なくなり、関節包の引っ張りもなくなりすっきりするのでしょう。
レントゲンには筋肉など軟部組織の異常は写りません。軟骨など骨の変形が痛みの原因の全てではないのです。MRIでも組織の異常が100%写る訳ではありません。

筋肉など血行性のある組織の痛みは、暖める、軽くマッサージするなど少し休養すれば良くなりますが、血行性の乏しい腱組織は中々治りません。アキレス腱などその例です。
またあまり長い間続き慢性化するものは、自律神経機能が正常でないことも疑われます。スポーツ選手は運動負荷をかけ続けます。
その結果、痛みを誘発する要因は増えてきます。筋緊張が続き過度の付加も加わることで筋肉内の疲労物質が溜まり、酸素不足や血管収縮により筋の持続的収縮や緊張が続くことで、血管内の痛みを伝える化学物質の濃度が高まります。
実験的に電気刺激により筋肉を持続収縮させ、その時痛みを伝えるブラジギニン・サブスタシンなどの科学物質の濃度を調べると、持続的収縮により増えているデータがあります。
限界までトレーニングすると筋肉が痛くなるのと同じです。筋肉に無理な運動負荷をかけすぎると痛みが発生します。

筋肥大・筋力強化が狙いなら、筋肉を柔らかくするストレッチなどで血行や柔軟性は保て、筋肉のコンディションを整えることはできますが、以前肉離れなどして筋肉に古傷がある、筋肉と骨とをつなげる腱・筋腱移行部は血行が乏しく回復が遅いので、無理をした後は慎重に自分の体と対話するように入浴や超音波機器などケアするのが必要です。

筋肉を包む筋膜の捻じれからも痛みはきます。当然関節や靭帯などにも負担は増し、制限された動きの中で完全なパフォーマンスは望めないだけでなく、怪我の原因に繋がります。
施術として筋膜リリース・トリガーポイント療法がお勧めです。また痛みの元となる筋肉を判別し、その筋の走行に沿ったゆっくりとした可動域の限界の少し手前で、1b抑制がかかるように筋肉を自然とリラックスするようなストレッチが必要です。痛みの元となっている筋肉の状態が良くなり、血流や疲労物質の循環が良くなり痛みも軽減するでしょう。
痛みがあるということはその痛み自体が侵害刺激となって筋肉を硬くし、疼痛反射により収縮します。できるだけ早くそれを取り除くことが大事になります。
また最近の研究では運動前のストレッチによりあまり筋肉を緩めると、パフォーマンスが下がるといわれます。運動前は少し筋肉の緊張が良い意味であった方が良いのかもしれません。

治療家側からの意見とすれば、どこか一箇所悪いところがあり、その代償性により一部の筋肉腱が硬くなっているのであれば、これ以上痛めないためにも筋緊張を低下させテーピングなどの処置が必要になります。 これは選手個人の感覚に頼ることも多く、このあたりが故障を長引かせてしまう原因になります。
傷めてしまう前に気付くことが大事になります。

ここからは専門分野になり、自律神経・脳中枢の影響など専門用語が多くなります。
難しいと感じた人は飛ばしてもらって結構です。

しつこく続く痛みというのは、自尊心、日常の仕事、人間関係、身体機能、心の状態、その人のクオリティライフ(生活の質)全てに多大な影響を及ぼします。 痛みの定義として「不快な感覚性、情動性の体験であり、それには組織損傷を伴うもの、または伴っている可能性のあるものと、そのような損傷があるような言葉で表現されるものである」と、国際疼痛学会で定義されています。
この定義は身体的であり心理的である体験としての痛みの二面性を表します。身体に起こった出来事を、私たちが主観的な認知によって心理的な自覚経験に基づいて判断します。
痛みは通常組織損傷の警告信号として発せられますが、組織損傷無しに痛みが生じることがあり、あたかも損傷が起こっているかのように感じることもあります。

急性痛と慢性痛との区別として急性痛は組織損傷が実際に生じている、または生じている可能性がある身体からのサインです。傷の完治までには数日から数週間かかりますが痛みは48時間から72時間で痛みは治まることが多いものです。
なにかにぶつけたり転んだりしたときの打ち身などです。原因がはっきりわかるのも急性痛の特徴です。適切に処方すれば快方に向かうのが普通です。慢性痛は3~6ヶ月以上続く痛みを示すことが多く、身体が生理的回復機能を正常な恒常性のレベルまで回復していないことがあげられ、組織損傷は実質的には回復しているが治癒の予測時期を過ぎても痛みを長引かせ、心理的情動変化や生活環境など関連しています。組織損傷の程度が痛みの程度と正確に合わないことも多く、明らかに小さな損傷でも激しい痛みを伴うことがあり、人によって感じ方表現の仕方に差が感じられます。

以前とまったく同じ痛みと思われるものでも、前より強く感じたり弱く感じたり、痛みの種類もズキンズキンする拍動性のものから、突き刺すようなものなどあります。
敵意のある疑い深い環境は、痛みを抱える人に不安、ストレス、自信喪失を強め、一方、思いやりのある協力的な環境は、感情を安定させ、自尊心を高め、対処行動を高めていきます。
自分の痛みの原因が分からない、痛みが長続きする、どこに行って診てもらっても同じという思い込みは、不安を増強させ、より痛みを増強させることになりかねません。
またこのような例があります。重症を負った兵士たちがひどい傷であるのにほとんど痛みがなかったと報告しており、何時間もまったく痛みを感じない可能性が示され、傷からの痛みはまったく感じなかったが、静脈注射ではショック症状になったとあります。

救急診療所における骨折や裂傷などを負った人々の調査では、患者様の38%が傷からの痛みを感じていなかったというデータがあります。 重大な危機にある時や意味深い仕事やスポーツに熱中している時、人は傷を自覚していても痛みの体験や反応にきわめて重要である脳中枢が他のことに専念して、痛みの入力を受けにくくしている可能性があります。

自律神経と痛みの関係

痛み→自律神経(交感神経)の興奮→血管収縮(血流不足)→新たな痛み

痛みやストレスに対する生体反応は自律神経系、神経内分泌系、運動器系、感覚神経系が互いに関係しあう。 典型的な自律神経反応は骨格筋、皮膚、心臓、内臓への交感神経の活性化です。
骨格筋への血流の増加、心拍出量の増加、立毛(とり肌)、発汗、皮膚と内臓への血流量の減少を招く。交感神経は活動性、副交感神経は休息へ切り替える神経機能です。

組織損傷や痛みが長く続くとストレス状態により、交感神経、副交感神経の区別ができなくなります。ストレスにより脳内物質のセロトニンが不足し、そのことで痛みの伝達物質であるセロトニン・ノルアドレナリンの不足へ繋がり、痛みを感じやすくなります。
ストレスと関係する副腎髄質からアドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミン・カテコールアミンが分泌され交感神経優位になる。痛み刺激は自律神経により伝達されます。
発痛物質のヒスタミン・プラジキニンは血管拡張と毛細管の透過性が増し痛みを広げます。
疼痛源のセロトニン・肥満細胞が損傷した細胞外液より放出され大量であると疼痛源のヒスタミンに作用する。
傷み受容器はノルアドレナリンに感受性を示し、交感神経活動によるノルアドレナリンが伝達物質として働くことで痛みが出現する。
痛み侵害刺激により交感神経優位になり、副腎髄質からノルアドレナリンを出します。
自律神経節前線維が副腎の髄質を神経支配しています。

自律神経系の抹消の部分は節前・節後求心性・遠心性により構成され、節後交感神経はエピネフリン様物質を放出し痛みを伝えます。外傷もまたその領域へ行く交感神経細胞に含まれるノルエピネフリンを放出し、これがα1受容体を活性化することで痛み物質を伝達します。
節後交感神経繊維はエピネフリン様物質を放出する。
関節の急性期の炎症にも自律神経反射・後根反射が関係します。

交感神経は痛み痛覚を運び血管、汗腺、毛腺に対して運動性である。
痛みによって交感神経活動は助長し血管収縮、血流悪くなり、ポリモーダル受容器活動が活発になります。元々筋肉など組織に痛みがあれば、更にポリモーダル受容器は活発になり傷みは助長します。無理に運動したり筋トレをしたりするとこのようになります。
運動し始めたはじめの段階で痛みに気付くことが大事で、そのまま続けると痛みの閾値・境界点が上がり分からなくなります。

また朝一番の一瞬の動き出しに痛みが感じられるか、痛みの自覚症状を本人が感じる事が大事になります。少し動き出して痛みが取れたからそのままにしておくと、慢性化し重大な怪我になったりします。
筋肉痛など痛みは交感神経の緊張をもたらします。痛みをとるのは交感神経の興奮抑え、働きを正常に戻すか血管を広げ血流を良くすることです。

視床下部

情動の変化や要求に対する反応を生み出す主要な役割を担い、ホメオスタシス人体の恒常機能を維持する役割があり、自律神経機能の中枢的役割を担います。
脳幹や脊髄での自律神経節への遠心性経路を介して、視床下部は交感・副交感神経を調整します。
視床下部は脳幹網様体や大脳辺縁系の一部であると考えられる側頭葉の核の集合体である扁桃体からの入力を受けます。
視床下部からの交感神経経路は脳幹や脊髄を下降し、T1とL2(腰椎の上あたり)間の脊髄の中間外側部でシナプスを形成します。
この領域に節前線維の細胞体が存在します。節前線維は短く白交通枝を通り前根を通って中枢神経系を出て、脊柱の縁にある交感神経幹の神経節でシナプスを形成します。
節後神経は灰白交通枝を通り脊髄神経に再度合流し、抹消神経とともに体の皮膚や血管に分布します。
交感神経幹は頭蓋骨低から仙骨下部に及びます。顔面や脳に分布する交感神経線維は上・中・下頚神経節から起こり、頚動脈や椎骨動脈に沿って標的器官に至ります。
損傷部位を超えて拡がる皮膚血流の変化や発汗活動の異常などは、交感神経系の活動によります。
交感神経系の可活動は一部には、交感神経と感覚神経感受性亢進が絡み合って働いています。
抹消神経損傷により血管周囲に存在するノルアドレナリン作動性ニューロン後根神経節が損傷側と非損傷側両方で発芽し、無傷の感覚神経や運動神経が交感神経節後線維の終末から放出される血中のアドレナリン・ノルアデレナリンに対して働きかけ、αアドレナリン受容体と結合することで生まれます。

痛みと感情・脳の働き

痛みの感知は脳のさまざまな部位からの下行性系によって強く調整され、侵害受容系は通常、持続的に抑制された状態となっています。この調整は鎮痛効果に関連し、私たちの体はふだん痛みをそのまま脳で感知せず痛みに関して抑制されているのが普通です。また自律神経機能、情動は痛みの感知にも影響しています。

脳機能

痛みの感知にはいくつかの脳部位があり、島前部、一次体性感覚野、二次体性感覚野、視床があり、運動機能と関係する運動前野も含まれます。
痛みの感知について一次体性感覚野では、その人の注意の状況によって変化します。基底核と中脳中心灰白質の両方が動作と運動制御の重要な機能に関わるだけでなく、侵害入力も受け持ちます。

痛みと情動

辺縁系や中脳中心灰白質は痛みの感知の調整に関与します。また情動をも制御します。前頭葉、視床下部、視床、扁桃体から中脳中心灰白質に投射する円柱上のモデルがあります。これらの神経解剖学的な繋がりは認知や情動と、痛みの感知、自律神経機能、運動との間に相互作用をもつことを示しています。

侵害入力の調整上行性知覚路と下行性痛覚調整経路

中枢神経系に本来備わる機能として侵害受容インパルスを制御することです。痛みの感知の抑制であり、ゲートコントロール説が有名である。脊椎レベルでは痛みを強く抑制する下行性セロトニン・ノルアドレナリンの脊髄経路があります。

ノルアドレナリン作動系とセロトニン作動系

中脳中心灰白質と近くの脳部位から脊髄へ投射する神経伝達物質のことです。巨大細胞核を経由する外側細胞索からの投射はノルアドレナリンが使われ、青班核からの投射も同じ系です。大縫線核経由の外側細胞索からの投射はセロトニンが使われます。これらの伝達物質には鎮痛作用があります。下行性ノルアドレナリン作動系は脊髄レベルで働き、抹消の機械的侵害刺激で誘発されるサブスタシンPの放出を抑制します。下行性セロトニン作動系は抹消からの侵害刺激で誘発されるソマソスタシンの放出を抑制します。最近の研究では痛みの抑制の際に反応している脳幹の同じ部位が、過度に刺激により痛みと痛覚増強の促進も起こすことが示されています。強い刺激では促進しますが、弱い刺激では抑制すると言った考え方です。脳幹からの下行性系を介して、痛みの感知が両方向性に制御されることは興味深いです。

痛みの心理・環境・行動的側面

全ての痛みは与えられた刺激が脳の皮質において痛いと、認識することによって起こるものです。このような痛みの認知は、痛みそのもの以外の多くの要素によって形作られ、その要素としてはその人の心理的なもの、痛みが起こった時の社会的な背景、期待されたり失望したりすることからの痛み行動があります。
痛みとは痛覚受容器が感知するものです。
破局化・・・痛みのことをあれこれと考えたり、増幅したり誇張したりして、痛みに対して無力であると感じることによる感情的な考え方のことを指します。

痛みの心理的要素

急性痛は組織損傷の信号として知覚されることが多く、考えられる原因に心当たりがあることが多いです。
しかし慢性痛では根本にあった組織病変が治癒しても持続して慢性化することがあり、良い治療手段が見当たらないこともあります。
しかし患者様は組織損傷が潜んでいる病変として、痛みを受け止め続けます。

このような思い込みが回復を妨げている可能性があります。痛みに対する受け止め方を転換させることです。痛みの元となっている原因解決の究明から、痛みにうまく対処する考えも必要です。人間の自然治癒力も引き出すという考えも必要です。
軟骨も時間をかけ適度な運動など負荷をかけることで、軟骨周膜ができ完全に元の状態ではないにしろ修復していきます。これは関節の循環機能によります。
長引く腱鞘炎も炎症なら痛み止め注射で快方に向かうでしょうが、腱の肥大化・腱変性・動きの異常による滑走性の変化・関節運動の代償性などの原因では快方には向かいません。
手術ではこれらの組織は外科術によるダメージが大きく、そのことによる硬縮が考えられます。
人間本来の治癒力を回復させながら、組織を自然修復させるのが良いと考えられます。

不安と恐怖

痛みに関する不安では、数多くの原因が考えられます。
治まらない痛みは不安を増強します。
痛みがいつ起こるか分からない状態では、痛みをコントロールするのが難しく不安を生み出します。
痛みについて無関心な周りの状況も不安を増します。
慢性的な痛みでは更なる痛みへの恐怖、元にある疾患の進行への恐怖、更に活動によって痛みが増悪することが多く、新たな痛みの発生に対する恐怖も生まれます。
患者様は持続する痛みが組織損傷の悪化や継続を表していると考え心配します。日常生活で定期的に休息をとり、ペース配分を心がけましょう。
痛みをそれ以上にも以下にも考えないようにして、大げさな表現を使わないように心がけましょう。
患者様は自分の傷みについて正しく理解していればうまく付き合っていけますが、痛みへの理解が不十分だとうまく対応できません。

ストレスと痛み

うつ状態、疲労、活動制限、そして自分の痛みはコントロールできないという観念が日常生活の中でストレスを増大させていきます。
過剰なストレスは睡眠、食欲、姿勢を乱し筋緊張を引き起こすことがあり、慢性的な痛みにつながります。
過剰なストレスは心理的な健康状態に悪影響を与えます。
不安感情と痛みのそれぞれが交感神経の緊張をもたらし、侵害受容を抑制する物質のセロトニン、ノルアドレナリンが減少することで、痛みを感じやすくなります。
痛みの知覚や運動系、交感神経、神経内分泌系を含み、痛みを軽減する際に、これらが調和して働きます。

プラシーボ鎮痛効果

「プラシーボ」つまり喜ばせるということは、痛みの軽減と関係します。
鎮痛について期待感、動機付け、感情は痛みの感知に関与し、中脳灰白質や脳幹部を活性化するようです。
痛みを回避する方向へ働き中枢神経系の痛み抑制作用を促します。
この抑制効果は患者様の治療に対する信念や学習による期待感により誘発されます。

手技療法が及ばす影響

なぜ私たちの手技が体に効くのか、手技療法・物理療法が体にどのように作用しているのか。
交感神経系と侵害受容系との関係に注目することは、手技療法の痛み軽減効果における内因性痛覚抑制系の役割を考えます。

手技療法に期待できる効果

モビライゼーション、カイロプラクティック、オステオパシーの交感神経系への影響について皮膚温、発汗活動、脈拍、呼吸数、血圧の上昇がみられ、交感神経興奮を示します。
この上昇反応は治療中から終了まで続き、上昇程度は、発汗活動で60%、皮膚血管運動活動30%、呼吸数35%、心拍指標15%という実験データがあります。
最近の研究によると治療による痛みの軽減効果と交感神経系に強い相関がみられます。手技療法の研究ではその効果に下行性痛覚抑制系が関与していると研究されています。

この下行性痛覚抑制系の中枢は中脳中心灰白質(PAG)の外側にあるとされています。
ここへの刺激で感覚、運動、交感神経の協調的な反応が引き起こされ、主に鎮痛、交感神経系興奮作用、運動神経興奮を同時に起こします。
それにより中脳中心灰白質の外側に位置する内因性痛覚抑制系エンドルフィン類を活性化し、痛みの軽減効果が得られるという学説があります。
更に交感神経系の広域な作用により延髄、橋の協調的なメカニズムが関係すると考えられるようです。
振幅の頻度による影響2Hzから5Hzの振動法による影響により手足や体幹の皮膚温度の変化を及ぼします。
手技療法が中枢神経のまで影響を及ばし痛みの軽減へと繋がっている可能性が考えられます。
治療の初期の痛みの軽減効果は感覚神経の好転による神経生理学的影響です。